新卒社員の早期離職の防止対策

あなたの会社は大丈夫?

1、新卒社員の離職状況

厚生労働省の令和3年の発表によると、就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が38.4%、新規大学卒就職者が34.9%でした。

また、離職割合は企業規模によっても大きく異なり、1,000人以上の大企業で、新規高卒就職者、新規大学就職者の3年以内離職割合がそれぞれ27.3%、28.2%と3割を切っているのに対し、30人未満の中小企業では、それぞれ54.4%、52.7%と半数以上が離職していることが分かります。

業界によっても離職率には大きな差があり、宿泊業・飲食サービス業や生活関連サービス業・娯楽業などで離職率が大きく、電気・ガス・熱供給業・水道業や製造業などでは離職率は低くなっています。

また、主な離職理由としては、いわゆる「リアリティショック」と言われる入社前後のギャップ、労働時間・休憩・休日などの労働条件や給与面での不満、職場の人間関係、「仕事が自分に合ってないのではないか」といったキャリアアップや将来性についての不安などが挙げられます。

一方、興味深い現象も見られます。マイナビ転職が実施した2024年の新入社員意識調査によると、今の会社を「3年以内に退職予定」と回答した新入社員は25.9%、「5年以内に退職予定」と回答した人は42.8%(3年以内退職と回答した人含む)と、およそ
4割もの新入社員が、入社時点で「数年以内に離職する」ことを決めているのです。

そしてその理由は、「結婚・出産などライフステージに合わせて働き方を変えたいから」が38.0%、「給料が低いから」が28.2%、「色々な会社で経験を積んでいきたいから」が18.8%となっています。

ここまで見てくると、3年以内離職者は「長く勤めるつもりで働いた結果、何らかの理由で離職に至った」ケース以外にも、「最初から数年で辞めるつもりで働いており、当人のキャリアビジョンに沿って計画的に転職をした結果やめた」というケースが意外と多いのではないかと推測されます。

2、企業が受けるダメージ

多様な働き方ができる会社、給与の良い会社に人が移っていくのは、より労働者の福祉を考えた良い企業へ労働移動が起きており、労働市場としては活性化した良い状況ともいえますが、人が辞めていってしまう企業側としては非常に大きな問題です。

特に中小企業では、数人採用したうちの1人でも辞めてしまうと、大きな痛手となります。

採用コストや育成費用が無駄になり、残された社員のモチベーションの低下にもつながるでしょう。また、昨今は転職サイトなどに辞めた人が口コミを書くことも多々あるため、場合によっては、企業イメージのダウンにもつながりかねません。

3、いまどき新入社員(Z世代)の特徴

それでは、企業側としては、人が辞めないようにどのような対策を講じればよいでしょうか?今どきの新入社員Z世代の特徴を踏まえながら、考えていきましょう。

日本能率協会マネジメントセンターが行った「イマドキ新入社員(Z世代)」についての調査結果によると、Z世代の主だった特徴には以下が挙げられます。

  • プライベート重視で、無理ない範囲で仕事がしたい
  • 挑戦志向より安定志向で、着実にできることから取り組みたい。失敗したくない。
  • 指導者には意図・関心・賞賛を求める。期待されていると頑張れる。
  • チームワーク・対面を重視し、人とのつながりを大切にしたい
  • 多様な働き方を推奨する会社で働きたい。選択肢は多い中で、最後は自分で決めたい。

また、Z世代の社員は承認欲求が高い一方で、自己肯定感や自己効力感は従来の新入社員と比較すると非常に低くなっています。

周囲からの評価を気にしすぎることや失敗のない範囲でのアサインを求める傾向が強くあります。

キャリア形成に関しては、「キャリアは自ら切り開く必要がある」への回答はこの3年でマイナス20.8%となっており、
「安心できる安定した環境で働きたい」という欲求が強いようです。

指導者との関わり方については、「褒める育成」を好む傾向がここ数年65%と高く見られます。また「仕事で行き詰まっている時は相手が察して話しかけて欲しい」「新人指導をせず、『忙しい』というのは先輩・上司の言い訳である」などの回答割合は4年間で+10%以上となっています。

4、新卒社員の離職防止対策 5つのポイント

①メンター制度の道入

上記の結果より、Z世代は「察して欲しい」「気づいて欲しい」メンタリティがあると言えます。逆に言うと、「困っていても自分からはなかなか言い出しづらい」「相手が忙しそうだと、声をかけて良いものか戸惑ってしまう」傾向にあるとも言えます。

それゆえに、イマドキの新入社員は「よく見ていてあげること」が大切です。そして、仕事をうまくこなせた際はしっかりと褒め、困っている時は積極的に手を差し伸べ、失敗を許容しながら、自己肯定感を高める仕組みづくりをすることにより、社員が主体的に成長意欲を持てる環境を提供することが重要です。そこで、メンター制度を取り入れ、メンターとなった先輩と二人三脚で成長していくことが期待されます。また、任せた仕事に対して最終目標到達までに短めのマイルストーン(途中目標)をいくつか設け、1つクリアするごとにメンターとなった先輩社員がフィードバックを行いながら、伴走支援をするなどが具体的な対策として挙げられるでしょう。

②心理的安全性を高める対話の促進プログラム

Z世代は繊細で敏感な面を持ちつつ、一方で人との直接的な交流も求めており、チームワークや人とのつながりを大切にしています。1on1ミーティングや、先輩との交流会、他部門との交流プログラムなど、様々な同僚とのコミュニケーションを通じて、自分が今の仕事をする意義を理解したり、自分に「居場所がある」「必要とされている」と感じられる、良好な職場環境を整備するようにしましょう。特にZ世代は横のつながりを強く意識します。全部門の新入社員交流会などを開くのも、仲間意識を醸成し、ひいては会社へのロイヤリティを高める一助となるでしょう。

③多様な働き方の制度の確立

先にも示した通り、Z世代はプライベートに重きを置き、ライフステージごとにあった、多様な働き方を望んでいます。

また、社会の動きも同じように、子育て世代や介護世代、持病も持ちながら働く人、シルバー人材、外国人労働者など、様々な人が働きやすい「多様な働き方」が積極的に求められる時代となっています。

例えばフレックスタイム制やリモートワークの導入、短時間正社員制度の導入など、自社に取り入れやすい制度から順次取り入れていくなどの対応が求められます。

転職などしなくても、自社の中で、ワークライフバランスに沿った働き方を選択することができれば、リスクをとって転職する人も減り、離職率は低下するでしょう。

④定期的な面談

メンターとはなんでも相談できる親しい関係性を作ってもらいつつ、現場の上司や人事部担当者と定期的に面談の機会を持ち、新入社員が不安や疑問を解消できる場を用意してあげることは非常に大切です。

社会人経験のない新卒社員にとっては、まず「働くということ」「会社員としての生活に慣れること」自体が大変です。また、期待して入社してみたものの「今の仕事が自分の成長につながるのか」と悩み、転職してしまう社員もいます。

会社の中での長期的なキャリアビジョンや組織の中での今の仕事の位置付けなどを、新卒社員の立場で寄り添って考え、その意義を説明してあげることも重要です。

キャリアカウンセリングなどを取り入れるのも良いでしょう。

⑤各種研修の提供

新卒社員はまず上司やお客様に対する言葉づかい、名刺の渡し方、報告書の書き方から学ばなければなりません。また、理不尽なことがあっても一つ一つ乗り越えて社会人としての強さやメンタルのしなやかさを獲得する必要があります。

そこで、新人研修や、ロジカルライティング研修、セルフマネジメント研修、キャリアデザイン研修など様々な研修を通し、知識を得る機会を準備してあげることも必要です。

「うちは中小企業で新人は2人しかいないから、わざわざ講師を呼んでいては採算が合わない」という事業主様は、外部の研修会社を活用されると良いでしょう。

外部の研修では、様々な企業から同じ新人という立場の社員が集まるため、多様な業種の人との出会い、様々な考え方に触れることを通して、自分自信を見つめなおすことができます。

5、まとめ

以上、新卒社員の離職防止対策5点をご紹介しました。

緊急性の高いもの、自社に取り入れやすいものから順番に整備してみてはどうでしょうか?

また、弊社では、採用の時点でのミスマッチを減らす工夫もご案内しております。

気になることが有れば、ぜひお気軽にグロースサポート社労士事務所にご連絡下さい。